卵屋がなぜスイーツを作るのか。
投稿日: 2026年05月01日

二代目は、家業を継ぐ前に、4年間、修業に出ました。

二代目の佐々木将司は、こっこらんどに戻ってくる前に、高知のある料理研究家のもとで、4年間、洋菓子を学びました。
家業は卵の卸売です。継ぐだけなら、修業はいらなかった。
それなのに、なぜ4年間、洋菓子を学んだのか。
理由はひとつでした。
「うちの卵を、もっといろんな形で味わってほしい」
ただ、それだけ。
卵を売るだけじゃ、足りない。卵そのものの美味しさを、お菓子という形で届けたい。そう考えたとき、自分の手で作れるようになるしかなかったんです。
修業時代の話を、将司は多くを語りません。
ただ、戻ってきた将司の手から、ロールケーキが、プリンが、たまごどうふが、次々と生まれていきました。
その一つひとつに、4年間の重みが詰まっています。
「素材が、すべてを決める」

修業時代に、将司が何度も聞かされた言葉があります。
「素材が、すべてを決める」
良いお菓子を作りたければ、まず良い素材を選びなさい。技術や工夫は、その後の話だ。──そう教わったそうです。
その言葉が、将司の中に残り続けました。
修業を終えて、こっこらんどに戻ってきたとき、将司の目の前には、20年かけて作ってきた茶卵がありました。
植物性の飼料だけで育てた、四万十の茶卵。橙色の黄身、透明な卵白、生臭さのない香り。
「素材が、すべてを決める」
教わった言葉と、目の前にある卵が、ぴたりと重なった瞬間でした。
「この卵があれば、世界一のスイーツが作れる」
将司は、そう確信したそうです。
ある日、将司は卵黄を見つめていた。

ちゃらんぷりんが生まれたきっかけは、ふと将司が割った一個の卵でした。
ボウルに落とした茶卵の卵黄が、いつもより深い橙色をしていた。指でつまめそうなくらい、ぷっくりと盛り上がっていた。
「この黄身を、そのまま食べてもらいたい」
将司は、そう思ったそうです。
そこから、卵黄を主役にしたプリンの開発が始まりました。砂糖の量、加熱の温度、混ぜ方の順番。何度も試作を重ねました。

完成したのは、口に入れた瞬間に「濃い」とわかるプリン。橙色の卵黄の力が、そのまま味になりました。
それが、ちゃらんぷりんです。
でも、卵白が、余ってしまった。

ちゃらんぷりんが完成して、将司は安堵しました。
ところが、すぐに新しい問題に直面します。
卵黄をたくさん使うと、卵白が大量に余るんです。
「20年かけて作った卵を、捨てるわけにはいかない」
これは、こっこらんど全員の共通認識でした。お客さまの声に応えて、20年。何度も試行錯誤して辿り着いた一個の卵。その半分を、捨てるなんて、できなかった。
そこから、もうひとつのプリンの開発が始まりました。
卵白だけで、美味しいプリンを作れないか。
これが、本当に難しかった。卵白は、卵黄に比べて、味の主張が弱い。コクがない。普通に作れば、ぼやけたプリンにしかならない。
何度も、何度も、配合を変えました。
そして、ある日、ようやく辿り着きました。卵白の透明感を活かした、軽やかでふわっとしたプリン。卵黄主役のちゃらんぷりんとは、まったく違う方向の美味しさ。
それが、こっこぷりんです。

兄弟のように、二つのプリンが並んでいる。
今、こっこらんどのショーケースには、ちゃらんぷりんと、こっこぷりんが、並んで置かれています。
橙色と、白。
濃厚と、軽やか。
卵黄と、卵白。
正反対のようでいて、根っこの部分でつながっている、兄弟みたいな二つのプリン。
「卵を、一滴も無駄にしない」
その想いが、二つのプリンを生みました。
「もったいない」という日本の精神と、「素材を活かしきる」という料理人の哲学が、たまたま同じ場所にあった。それが、こっこらんどの強みかもしれません。
大賞をいただいた、たまごどうふ。

二代目の挑戦は、プリンだけでは終わりませんでした。
「ごちそうたまごどうふ」は、2018年の「高知家のうまいもの大賞」で、大賞をいただきました。
茶卵の力を、もっとも素直に味わえる一品です。

つるんとした口当たり。奥から立ち上がる、出汁の香り。噛むほどに広がる、卵そのものの甘さ。
シンプルな料理ほど、素材の差が出ます。ごまかしようがないからです。
たまごどうふは、卵屋が作るからこそ、本領を発揮する料理。20年の養鶏で辿り着いた茶卵が、料理として完成した形が、ここにあります。
ロールケーキも、カヌレも、焼き菓子も。
茶卵から生まれたスイーツは、ほかにもたくさんあります。
ちゃまごdeロールは、累計10万本を超えたロールケーキ。茶卵をたっぷり使ったスポンジは、卵黄の自然な甘さで、砂糖を控えめにできました。

ちゃまごでしゅは、茶卵で作るシュークリーム。割った瞬間に立ち上がる卵の香りに、子どもたちの目が輝きます。
カヌレ、焼き菓子の詰め合わせ、季節限定のスイーツ。一つひとつに、「この卵だからできる」という理由があります。

材料表を読んでいただければ、わかります。
卵の名前が、必ず一番上にある。
それが、こっこらんどのスイーツの、共通点です。
ファンを、裏切らない。

「うちのファンを、裏切らない卵づくり」
これは、こっこらんど創業時から、一度も変わっていない私たちの背骨です。
スイーツを作るときも、同じ哲学です。
茶卵を信じて選んでくださる方を、裏切らない。シンプルな材料で、卵そのものの美味しさを伝える。流行に乗って、奇をてらうことはしない。安易に量産しない。
「卵屋がスイーツを作るって、そういうことね」
そう言ってもらえる仕事を、ずっと続けたい。
派手なことはできません。SNSでバズることも、たぶんありません。
でも、一度食べてくれた方が「また食べたい」と思ってくれる。そういうスイーツを、これからも作り続けます。
朝、養鶏場で集めた卵が、その日のスイーツになる。

毎朝、養鶏場で一つひとつ集められた茶卵が、その日のうちに工房へ届きます。
将司の手で、ロールケーキになる。プリンになる。たまごどうふになる。
そして、お客さまのもとへ届く頃には、いちばん美味しい状態で食卓に並ぶ。
このサイクルを、毎日、毎日、繰り返してきました。
20年かけて作ってきた一つの卵が、いろんな形で誰かの「美味しい」になる。誰かの笑顔になる。誰かの記念日になる。
それが、卵屋がスイーツを作る、本当の理由です。
いつも食卓が、笑顔でありますように。

私たちのお店の名前は、「こっこらんど」です。
「こっこ」は、鶏のこと。
そして「ランド」は、卵から始まる、小さな世界。
朝の食卓、誕生日のテーブル、お祝いの席。誰かの笑顔のすぐそばに、卵がある。スイーツがある。こっこらんどがある。
そういう景色を、これからも作り続けたいんです。
いつも食卓が、笑顔でありますように。
こっこらんどのスイーツを、味わってみる。
[ 商品一覧を見る → ]

